「SaaS営業に興味があるけど、そもそもSaaS営業が何か知らない」
「SaaS営業の需要が高まっているのはなぜ?」
上記のような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
私も初めて転職した際、SaaSの営業職の求人を人材紹介から勧められました。当時はSaaS営業がどのようなものかあまり理解せずに転職活動していました。
近年クラウドサービスの進化とともに、近年では多くの企業がSaaS(Software as a Service)を利用しています。
そのため、SaaS 営業の需要も高まりつつあります。私自身、実際にSaaSの営業をしてみてキャリアの選択肢が一気に広がったと感じています。
本記事では、SaaS営業の具体的な業務内容やSaaS営業の役割、SaaS営業として成功のためのポイントについて詳しく解説します。
【この記事で分かること】
- SaaS営業の役割
- SaaSの営業手法
- SaaS営業の将来性
- SaaS営業として活躍するためのポイント
20代の若手の方にはSaaS営業への転職はおすすめのキャリアの一つです。私自身もSaaS営業を経験してきました。
本記事を読むことでSaaS営業の役割を理解することができるはずです。
営業としてのキャリア戦略を立てるための参考にしてください。
SaaS営業とは何か
SaaSとは「Software as a Service」の略称で、クラウド上で利用できるソフトウェアサービスのことです。
従来の営業は「ソフトウェアやシステムを導入しましょう」とシステムを導入してもらうことが営業の役割でした。一方、SaaSはサブスクリプションモデルであり、従来のシステムやソフトウェアより導入のハードルが下がったことで爆発的に普及しています。
SaaS営業は、SaaSを導入してもらうだけでなく、継続的に利用してもらうことも求められる営業職です。
導入のハードルが下がった分、一旦導入しても活用してもらえなければ解約されることもあるため、「顧客のビジネス課題を解決できるか」が重要です。
SaaS以外にもPaaSやIaaSという業態もあるため興味がある方は参考にしてみて下さい。
参考:SaaSとは?PaaS・IaaSとの違いや代表例をわかりやすく解説|営業ラボ
SaaS営業と一般的な営業の違い
SaaS営業と一般営業の大きな違いは、営業プロセス毎に職種が分かれています。従来の営業では、アポ獲得〜提案〜受注まで、場合によっては導入後の担当までを一人で担うことが一般的でした。
SaaS営業では、インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスという職種に分類されることが一般的です。
というのも、SaaS営業は一般的なソフトウェア販売とは異なり、サブスクリプションモデルに基づいた営業活動を行います。これにより、顧客は必要なときに必要な機能だけを使い、月々の料金を支払うことが可能です。
私は採用や人事管理系のSaaS営業の経験がありますが、導入後にしっかり使ってもらうことが難しかったです。人事系SaaSというくくりで見ても何十社がサービスを提供しているため、導入しても効果がなければ他社に切り替えられてしまいます。
とくにインサイドセールスはアポイント獲得までを担うことが多く、未経験でもチャレンジがしやすい点が特徴です。
SaaS営業の重要性と市場の拡大
SaaS市場は急速に拡大しており、多くの企業がサブスクリプション型の営業体制を採用しています。
市場調査会社によると、世界のSaaS市場は今後数年間で爆発的な成長が予想されています。
これに伴い、SaaS営業の需要も高まりつつあります。
スマートキャンプ株式会社が発刊した「SaaS業界レポート2020」によると、 国内SaaS市場は年間平均成長率が約13%の勢いで成長しているそうです。
また、doda転職求人倍率レポートによると、IT・通信業界のニーズが伸びていることが分かります。

私も法人の中途採用をお手伝いさせてもらっていますが、SaaSを始めとしたIT業界の営業職のニーズは高まっていると感じています。
また、SaaSに限らず分業制の営業体制を採用している企業も増えているため、SaaS企業での営業経験は市場価値が高まっているでしょう。
SaaS営業におけるカスタマーサクセスの役割
カスタマーサクセスは、SaaS営業において非常に重要な役割を果たします。
カスタマーサクセスチームは、顧客がサービスを最大限に活用できるようサポートし、長期的なリテンションを促進します。
具体的には、継続的にサービスを活用してもらい顧客満足度を高めるために、顧客のニーズを把握しながら定期的に提案をしていきます。
定期的なフォローアップを通じて顧客との関係を深め、アップセルやクロスセルの機会を創出します。
SaaSの営業プロセス
SaaS営業では、顧客(リード)獲得からアポイント獲得、商談してからのクロージング・受注、契約後のオンボーディング・カスタマーサポートまでの一連のプロセスがあります。
まずはターゲット顧客を明確にし、有用なコンテンツやデモを通じて興味を引きます。その後、リードナーチャリングを行い、顧客の購買意欲を高めていき、適切なタイミングで商談獲得します。
商談では、システムや機能の説明をするだけでなく、顧客の課題解決に向けた提案が最も重要です。
実際にSaaS営業をしましたが、単なるプロダクトの説明では売れません。競合サービスが多い中で、顧客のどんな課題をどのように解決できるのかが示なければ、継続的に使ってもらえません。
そして、契約成立後は迅速なオンボーディングを行い、顧客がスムーズにサービスを利用できる環境を整えます。
最後に、継続的なカスタマーサポートを提供し、顧客満足度を高めていきます。
マーケティングによる見込み顧客の獲得
SaaSの営業活動においては、ターゲット顧客の分析から始まります。主にマーケティング部門の役割です。
具体的には、市場調査や競合分析を通じて、自社製品が最適なソリューションとなる顧客層を洗い出します。
- 従業員100名以下の企業の導入実績が多い
- 製造業の顧客が多い
というように自社商材と親和性の高いターゲットを分析していきます。
見込み客を特定するためのツールとして、CRMシステムやリードジェネレーションツールが活用されます。セミナー参加や名刺交換等をおこない一度接点を持った顧客を管理していきます。
これにより、リードの質を高め、より効率的な営業活動が可能となります。
インサイドセールスによる商談獲得
マーケティングが獲得した見込み顧客に対して、適切にアプローチして商談機会を獲得する役割としてインサイドセールスがあります。
具体的には、自社ウェブサイトやソーシャルメディア、ウェビナーなどを通じて獲得した見込み顧客にアプローチします。また、一度獲得したリードに対して、定期的にアプローチして購買意欲を高めるプロセスも重要です。メールマーケティングやセミナーを通じてリードとの関係を深め、最終的には商談獲得〜受注に結びつけます。
3社の営業組織でインサイドセールスを経験しましたが、企業によってアプローチ先は変わります。
- インバウンドに対してのアプローチ
- ターゲット分析して顧客リストを作り新規のアウトバウンド
- 過去失注やセミナー参加した顧客への再アプローチ
- 過去に自社サービスを利用した企業への再アプローチ
上記のような経験をしましたが、営業組織によって注力するセグメントが違うため、インサイドセールスに求められることや得られるスキル・経験も変わってきます。
フィールドセールスによる提案〜クロージング
インサイドセールスが獲得した商談に対して、フィールドセールスが商談を実施して受注に繋げていきます。
顧客に対するプレゼンテーションや製品デモの提案は、SaaS営業の成功に欠かせない重要な要素です。
効果的なプレゼンテーションを行うためには、顧客のニーズを理解し、製品がどのように問題解決につながるかを具体的に示す必要があります。
また、製品デモを通じて、実際の使用感や機能を体験させることで、信頼感を築くことができます。これにより、導入後のイメージを掴んでもらい、その結果購買意欲が高まり契約成立の確率が上がります。
一番重要なのは、顧客がどんな課題を解決したいのか・自社サービスを使ってどのように課題を解決できるのかを示すことです。
特にSaaS営業はBtoBの無形商材を営業することが多いため、コミュニケーションスキルから課題解決のスキルといった汎用性の高いスキルを身につけることができるでしょう。
導入後のオンボーディングとカスタマーサポート
契約が成立した後、顧客に継続的に活用してもらうことがカスタマーサクセスの役割です。
まずは、顧客がスムーズにサービスを利用開始できるようオンボーディングを進めていきます。
初期設定やユーザートレーニングを適切に行うことで、顧客の運用開始までのストレスを軽減していきます。
また、継続的に活用してもらうためにカスタマーサクセスの役割が重要です。問題が発生した際には迅速に対応し、顧客が持つ疑問や懸念を解消することで、長期的な関係を構築します。
SaaSはビジネスモデル上、自社サービスの継続率を高めたりアップセル・クロスセルをしてLTVを高めることが重要です。
参考: LTVとは?重要視される理由と計算方法を解説|NECソリューションイノベータ
類似職種でカスタマーサポートがありますが、SaaS営業におけるカスタマーサクセスとは役割が異なります。
カスタマーサポートは顧客から問い合わせがあれば対応するイメージですが、カスタマーサクセスは顧客の課題解決に向けて能動的に提案をしていくポジションです。
SaaS営業の未来と今後の展望
技術の進化とSaaS営業の進化
テクノロジーの進化により、SaaS営業も大きな変革を迎えています。
例えば、AIや機械学習の導入により、顧客の行動予測や効果的なアプローチ方法の提案が可能になりました。
また、顧客データの高度な解析を通じて、よりデータドリブンな営業活動が実現できます。
これにより、顧客満足度の向上と同時に、解約率の低減も期待できるため、効率的な営業活動が可能になり、企業の収益性を高めることができます。
単に営業プレイヤーとして成果を残すだけでなく、データを活用して営業活動できる人材は今後も市場価値が高まっていくでしょう。
グローバルマーケットへの進出
SaaSサービスは、インターネットを介して提供されるソフトウェアサービスのため、地理的な制約がほとんどありません。
これにより、企業はグローバルマーケットへの進出が容易になりました。グローバル市場への進出を検討している企業も増えているでしょう。
新しい営業手法の試みと成功事例
最近の成功事例として、HubSpotのインバウンドマーケティング戦略が挙げられます。
HubSpotは、価値提供を重視したコンテンツマーケティングを通じて顧客を引き寄せ、自社の製品やサービスに関心を持つ見込み客を獲得しています。これにより、高いリードコンバージョン率を達成し、持続的な成長を実現しています。また、パーソナライズされた営業アプローチやチャットボットを活用した顧客対応も、新しい営業手法として注目されています。
高した成功事例がある一方で、分業制の営業組織を敷いてる企業は多くの課題を抱えていると思います。
私が経験した3社のうち1社は大手で100名以上の営業組織でしたが、まだまだ営業手法が整備されていなかったりインサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの役割を模索しているという状況でした。
つまり、SaaS営業は市場の変化や社内体制の変更によって、役割が流動的になることが多い職種と言えます。営業として幅広い経験を積みたい方はSaaS営業に向いているでしょう。
SaaS営業で身に付くスキル
SaaS営業では以下の経験を積むことができます。
営業としてのスキルアップだけでなく、ビジネスパーソンとして活躍するために必要なポータブルスキルを身につけることが可能です。
- 顧客折衝能力
- 他部門連携やプロジェクト推進のスキル
- データを分析した業務改善スキル
SaaS営業やインサイドセールス・フィールドセールスでキャリアを積んできた私の経験談も含め、特に以下の3つのスキルを伸ばすことができると感じています。
顧客折衝能力
顧客中心のアプローチは、SaaS営業の基本です。有形商材や売り切り型の営業スタイルでないため、継続的に活用してもらうことで顧客のビジネス課題の解決に寄与しなければいけません。
その中でも、SaaS営業では以下の能力を磨くことができます。
- BtoB営業におけるコミュニケーション能力
- 課題設定能力
- 課題解決に向けた提案力
まず、SaaS営業はBtoB営業であることが多いため、対人のコミュニケーションに加えて、対法人向けのコミュニケーションも必要です。目の前の商談相手だけでなくサービス導入の意思決定者や導入後に利用する現場担当者等、さまざまな人を動かしていきます。
また、SaaSは無形商材であるからこそ、顧客のニーズや課題を理解し、それに対するソリューションを提供することが成果を出すために欠かせません。
なぜ自社サービスを導入するべきなのか・サービスを導入した後どんな成果が見込めるのか、この二つが顧客と合意できなければ売ることが難しいです。
他部門連携やプロジェクト推進のスキル
SaaSの営業はプロセス毎に役割が異なるため、部門間連携を取る機会が多いです。
例えば、インサイドセールスであれば、マーケティングやフィールドセールスのチームと連携をとっていきます。
前者であればマーケティングチームがリードを生成し、営業チームがそのリードをフォローアップするという流れをスムーズにすることで、リードの質が高まり、営業活動の効果が向上していきます。
後者であれば、受注率向上に向けてどのような顧客にアプローチすべきか、商談獲得する際はどんな情報をヒアリングすべきか等を議論することが多いです。
部門間連携においては、共通のKPIを設定し定期的なミーティングを通じて情報共有を行うことで、両チームが一丸となって目標達成を目指していくことが理想です。マネジメントが中心に連携を進めていくことが多いですが、メンバーでも意見をあげることもできるでしょう。
また、SaaSは市場が伸びていますし、事業拡大しているSaaS企業も多いため、営業の役割が流動的になることも多いでしょう。社内プロジェクトが発足され、営業活動以外にも社内でもプロジェクト推進に携わることもあるはずです。
対顧客に対しての営業経験に加えて、対社内で関係者を巻き込んでプロジェクトを推進する経験を積むことができれば、あなたの市場価値も上がるはずです。
データを分析した業務改善スキル
SaaS営業では、データドリブンなアプローチが重要です。
CRMやSFAを活用して顧客データを管理し、データ分析を通じて営業活動をモニタリングすることが一般的です。
これにより、どのアプローチが最も効果的かを明確にし、戦略を最適化することができます。自分で立てた施策の効果検証をすることができるため、営業活動におけるPDCAを回すことができます。
また、データを基にした予測分析を行うことで、将来の売上を予測し、営業活動を効率的に計画することが可能です。
私がインサイドセールスをしていた時は、
- いくつかのトークスクリプトを用意して、それぞれアポ獲得につながるか検証する
- アポイント獲得率が高いセグメント(業界や規模感等)を分析しリスト作成する
というようにデータ分析をしていました。
また、上記のような定量的なデータ分析だけでなく、顧客インタビューやフィードバック収集を通じて、製品改善や新機能の開発に活かすことも可能です。
まとめ
SaaS営業は、従来の営業手法とは異なるスキルやアプローチが求められる分野です。市場の急速な拡大と技術進化に伴い、その重要性はますます高まっています。
SaaS営業を通じて培われるスキル、例えば顧客とのコミュニケーション力や他部門との連携力は、どの業界でも活かせる貴重な能力です。
これからのキャリアを考える20代の営業職にとって、SaaS営業は柔軟なキャリアパスを提供してくれるでしょう。
SaaS市場のグローバルな成長は個人の成長機会も広げ、国際的な視野でのビジネス展開が可能になります。さらに、データ分析による業務改善スキルは、ビジネス環境の多様化に対応するための基本的な能力となるでしょう。
企業と顧客の架け橋として求められる役割をしっかりと理解し、新しい営業手法に挑戦する意欲を持って取り組むことで、今後のキャリアにおいても大きな成果を得られるはずです。
SaaS営業における経験は、未来の自分にとって大きな財産となるでしょう。